研究概要 |
本研究の研究成果は,次の3種類にまとめることができる。 (1)本研究課題のもっとも基礎となるものであり,非平衡状態から平衡状態に単調に緩和しながら形成される分子集合体あるいは分子集団の構造形成を扱った。具体的には,混合界面活性剤を含んだ溶液中で自発形成されるベシクルの形成過程に関する研究,および,有機相中に形成される棒状逆ミセル内部を化学反応場として利用したナノスケールシリカの形成過程に関する研究,さらに,マランゴニ効果を用いて界面活性剤が界面から脱着する過程だけを選択的に測定する方法を提案した研究を含んでいる。(2)界面物性の非線形振動の発生機構に関する研究であり、このような系として最も単純であると考えられるリン酸界面活性剤とカルシウムイオンを含む油水系を見出し、動的界面張力の振動パターンを検討し,数々の特徴を見出した。これらの知見に基づいて,この振動現象の機構を考察した結果,界面は通常の界面活性剤とそのカルシウム塩との2種類の界面活性剤の混合系となるが、界面においてはこれらの一様な混合状態は熱力学的に不安定であり,一種の界面での相分離が発生する結果,吸・脱着のパターンに,界面での相分離に伴う分子集団形成の効果が加わることとなり,パターンが複雑な振動型となることを明らかとした。(3)上記の過程を時間依存型Ginzburg-Landau方程式に非線形吸・脱着項を加えることで表し,それを数値計算することで,吸着物質濃度の時間変化がどのようなものになり得るかについての理論予測を行った。本計算結果は,様々な興味ある結果を与え,本研究でおこなった数々の実験結果と興味深い対比を示した。この成果により,"非線形物性の計測から界面での分子集団形成のダイナミクスを探る"ことの基盤が得られたものと考えている。
|