研究概要 |
耐食FRPの化学的な腐食劣化に対し,光ファイバを利用したオンラインモニタリングにより非破壊で定量的評価を行うことを目的に研究を行った.まず,耐食FRP用マトリックス樹脂として使用されているイソフタル酸系不飽和ポリエステル樹脂を水酸化ナトリウム水溶液中に浸せきし,腐食挙動を観察したところ,表面から変色層を形成しながら腐食が内部に進行するタイプの腐食層形成型腐食であることが明らかになった.変色層はアルカリの浸入層および加水分解を受けた層と一致し,「変色層=浸入層=腐食層」であることが確認された.次に,このような腐食劣化をモニタリングする方法として,コア部分(光線透過部)を露出させた光ファイバを樹脂内に埋設することにより,光ファイバ内を通る光の波長特性の変化をフーリエ変換型赤外分光光度計(FT-IR)を用いて検出し,化学構造の変化を検出する機能を付与したスマートマテリアルの作製を試みた.昨年度,未硬化の液状樹脂と,その液状樹脂に水酸化ナトリウム水溶液を加えて加水分解反応を起こさせたものについてFT-IR分析を行い,エステルの加水分解を示すIRピークの変化が観察されたことから,本システムを用いて樹脂の加水分解による腐食劣化をオンラインモニタリングにより検知できる可能性を見出した.これについて,種々の条件における加水分解を確認するとともに,光ファイバを埋設した状態で硬化させた樹脂のモニタリングを検討した.この結果,アルカリ環境下では不飽和ポリエステル樹脂の加水分解が進行して透過光量の変化は得られるものの,赤外領域の光を十分透過するカルコゲナイドファイバ自身も損傷して最終的には溶解するために,波長特性の変化は非常に小さかった.そこで,硝酸環境下で劣化する系と比較した結果,劣化に伴う波長特性は異なり,劣化における化学反応の違いを検知することができることを見出した.これにより,化学構造の自己検出機能を持ったスマート材料の創製が可能となる.
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