研究概要 |
免疫バイオセンサーは内分泌撹乱物質(環境ホルモン)をはじめとする環境中の微量物質の有力な分析法として期待されている。本研究は簡単な非標識高性能免疫バイオセンサーとしてミクロクロマトグラフィーバイオセンサーを提案している。上記バイオセンサーの基礎的知見を得るために、はじめに96wellマイクロプレートによるサンドイッチ酵素免疫測定法の測定範囲や再現性について調べた。次に抗原抗体複合体と遊離抗体のサイズ認識分離(SEC)を検討した。 抗原にBSA、フェリチン、抗体に抗BSA抗体、抗フェリチン抗体を用いて抗原抗体複合体と遊離抗原、遊離抗体の分離挙動を高性能サイズ排除クロマトグラフィー(HPSEC)を用いて検討した。HPSECカラムはTSKSuperSW3000(4μm,4.6mmI.D.x30cm)を使用し移動相10mMphosphate buffer+0.1M Na_2SO_4、流速0.2mL/min,温度25℃,sample 10μLで実施した。BSAのピークが低くなり、BSAは抗BSA抗体と結合して抗原-抗体複合体を形成したことが分かった。また、複合体、遊離抗体、遊離抗原はよく分離されている。しかしながら、モノクロナール抗体を使用しても単純な1対1や1対2の複合体が形成されるのではなく、低濃度でも巨大な凝集体が形成される場合がほとんどであり、遊離での抗原抗体複合体形成の複雑さが明らかとなった。多くの酵素免疫測定法の開発においては抗原蛋白上に繰返エピトープのないあるいは少ないMAbを探しているのではなく初期段階から高感度を示すクローンを選択しているので抗原上に存在する繰返しエピトープを認識する抗体をスクリーニングしていることが示唆された。 以上HPSECの抗原抗体複合体の分離実験より抗体の性質を調査することができることが明らかとなった。この方法により適切な抗体を選定することにより従来の酵素免疫測定法とミクロHPSECによる分析の、それぞれに新しい展開が期待できる。
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