研究概要 |
バイオプロダクツの効率的分離法の開発を目指して,目的物質を吸着する前は,水相によく分散し,吸着後は自己凝集によって水相から分離される可逆凝集性微粒子吸着剤を調製し,その特性を解析した。 代表的なバイオ生産物であるアミノ酸の分離工程で使用されているイオン交換樹脂は,その多孔性によって吸着速度が非常に遅いという欠点をもっている。この欠点は微粒子化によって改善できるが,一方で吸着操作後の吸着剤の分離が困難になるという新たな問題点が生じる。 本研究では,チタン酸微粒子(TA)を吸着素材とすることによって吸着に関する問題点を解決し,その表面を卵白アルブミンコーティングすることにより,吸着後の固液分離操作性を向上させた新吸着剤(TOA)を調製し,ヒスチジン(His)をモデル吸着質とした吸着・凝集実験によって,その性能を評価した。調製したTA(TOA)はその85%が直径1μm以下のサブミクロン微粒子であった。沈降速度実験によって,等電点が中性域にあるTA粒子は分散安定性が低いため,静置後,時間経過とともに濁度が急激に低下したが,TOAは濁度が時間によってほとんど変化せず,分散安定性が大きく改善されたことを示した。さらに,His吸着速度実験の結果,TOAとTAはほぼ同等のHis吸着量と吸着速度を有し,TOA表面のアルブミン層はHis吸着に対しては,量と速度の両面にほとんど影響を与えていないことがわかった。本研究が開発した微粒子吸着剤は,吸着前は水中で安定に分散するため吸着速度が非常に速く,目的物質の吸・脱着により可逆的に凝集・分散するタイプの吸着剤であることが明らかとなった。
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