研究概要 |
ポリオレフィン系プラスチックを有用な石油化学原料へ高効率で転換可能な触媒として、ガリウムシリケート、ガリウム/FSM-16,ホウ素シリケートを見出し、それらの触媒特性について検討した。 1.ガリウムシリケートを用いるポリオレフィンの分解では芳香族炭化水素(主成分はベンゼン,トルエン、キシレン(BTX))と水素が高収率で得られることを明らかにした。これらの選択的生成には高温が有利で、500℃以上での炭素基準のBTX収率は50-60%、水素収率は3%(ポリオレフィンの水素含有量基準では25%)であった。強酸性のガリウムシリケート触媒上では分解と同時に骨格異性化も活発に起こるため、ポリエチレン、ポリプロピレンのような構造が異なるポリオレフィンからでも同組成の生成物が得られた。 2.ガリウム/FSM-16は水素の選択的生成に高活性な触媒であり、最大でポリオレフィンに含まれる水素の38%を水素ガスとして回収することができた。また、ガス生成物中の水素濃度は85vol%と大変高いこともわかった。しかし、細孔径が大きいFSM-16系ではコーキングが起こるため、BTXの収率は低くなった。 3.ホウ素シリケートは、ポリオレフィンの低級オレフィン化、特にプロピレン,ブテンへの分解に極めて有効な触媒であった。この触媒は弱酸性で水素移行反応に対する活性は低いためパラフィンと芳香族の生成が抑制され、結果的に低級オレフィンが選択的に生成した。 以上のように本研究では、新規な高分子分解触媒を開発することにより、廃プラスチックの主成分であるポリオレフィンから石油化学原料として有用な低級オレフィン、BTX,水素を回収する新しいプラスチックリサイクルシステムの構築を可能にした。この成果を基に実用化を目指すプロジェクトが最近スタートした。
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