研究概要 |
本研究の目的は、「抗体可変領域(Fv)断片の抗原による安定化を利用した新原理高速免疫測定法に適したFv断片を,迅速かつ効率的に得るための方法論の確立」であった.これを達成するため,まず単一の遺伝子を持つ繊維状ファージを用いて,抗体の抗原結合能および二種の可変領域VH/VL間相互作用を簡便に測定できる新規ファージディスプレイ系spFvシステムを構築した.すでに新原理高速免疫測定法(オープンサンドイッチ法,OS法[4])が実行可能である事が知られる抗リゾチーム抗体HyHEL-10を用いたモデル実験により,このシステムでファージ産生ホストのアンバー変異の有無を変更するだけで抗原結合能およびVH/VL間相互作用が実際に測定できることを確認した.当初用いたファージミドベクター上の遺伝子の安定性が十分でないという問題があったが,オペロン前後に転写終結配列を挿入することで挿入遺伝子の安定性を飛躍的に向上させ,ライブラリから目的Fv遺伝子を選択することが可能となった[5,特許出願中]. またこれと並行し,ファージ提示系を用いたVH/VL相互作用を決定する残基の基礎的検討をヒト抗血清アルブミン抗体をモデルとして行い,H鎖超可変領域CDRH3の基部にある残基H95の影響が大きいことを見出した[3]. また非競争的ホモジニアスOS法の更なる高感度化をめざし,発光酵素から蛍光蛋白質へのエネルギー移動[1]および酵素変異体間の相補性[2]を利用した新規な測定法を考案し,従来法の10-1000倍の感度を得ることに成功した.
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