研究概要 |
従来から知られるイオノフォアの多くがイオン認識部とスペーサー部とから構成されるとの観点から、本研究ではイオン認識部としての12-crown-4、15-crown-5あるいは18-crown-5をスペーサ部であるフタル酸ならびにカリクス[4]アレンに連結する手法を検討することによって、新たな機能を持つイオン識別ホスト分子を得ることを目的とした。その結果、フタル酸ニステル型同種ビス(クラウン)誘導体:I型を3種、フタル酸エステル型同種ビス(クラウン)誘導体:II型を3種、およびカリクス[4]アレン型同種ビス(クラウン)誘導体:III型を3種の計9種の誘導体の合成単離に成功し、ついで各誘導体5mg,ポリ塩化ビニル(PVC)59mg,可塑剤125mg,添加塩1.2mgからなるPVC膜電極を作製し、その基本特性とイオン選択性を電位差測定法により評価した。その結果、I型のbis(12-crown-4)誘導体は市販のNa^+イオノフォアに匹敵するイオン選択性を発揮するが、環サイズが大きくなるbis(12-crown-4)>bis(15-crown-5)>bis(18-crown-6)の順に基本特性とイオン識別能が低下する。一方、II型誘導体ではI型誘導体の持つこの欠点が解消されるとともにII型の(15-crown-5)-(18-crown-6)誘導体の場合、可塑剤可変型の機能(誘電率の高い可塑剤(FNDPE, NPOE)系の電極はK^+選択性、誘電率の低い可塑剤(DOP, DOS, DBE)系の電極はCs^+選択性、BA系の電極はRb^+選択性)が発現した。このような機能はIII型誘導体で顕著に現れ、III型のbis(15-crown-5)-NPOE系の電極はK^+選択性(-logk^<pot>_<K,Ag>=1.45)、DOP系の電極ではAg^+選択性(-logk^<pot>_<K,Ag>=1.44)を発揮するなど全く性質の異なるイオンに対して選択性が発現する。この可塑剤可変型と称することのできる新たな機能は、イオン捕捉サイトのフレキシビリティーに由来することから、エントロピー効果により重金属イオン識別も可能と考え、シッフ塩基(23種)のAg^+イオノフォアとしての機能発現へと発展させた。
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