研究概要 |
金属リチウム負極の充放電可逆性を向上させるために,金属リチウムを物理的・化学的に制御することによる界面構造の最適化を検討した。温度負荷あるいは添加剤と充放電可逆性との相関を解析し,最適な界面構造を明らかにした。以下の3課題を設定し研究を進めた。成果の大部分は別記リストの学会誌等で報告したが,さらに平成14年度開催予定の「電気化学大会」ならびに「第11回リチウム電池国際会議」等で口頭発表する予定である。 1.金属リチウム負極の物理的・化学的界面構造の最適化 Ni基板上に析出したLiおよび金属Li箔の充放電挙動に及ぼす物理的あるいは化学的界面構造の最適化について検討した。低温で予め金属Liを充放電させておく(「低温前処理」する)と,その後昇温させてもサイクル寿命が向上することを見出し,この低温前処理の効果は,電解液の種類に依存することを明らかにした。金属ヨウ化物添加剤による化学的界面構造の最適化においては,金属塩の種類により添加方法に違いがあることがわかった。AII_3を用いた場合,初回充電時のみ添加し,以後のサイクルは無添加の電解液でサイクルさせる(「前処理する」)方法が有効であることを見出した。サイクル数の絶対値は,セルの形,電極面積,電流密度,温度などの実験条件に依存するものの,Al塩添加濃度には最適値があることが判明した。 2.金属リチウム界面構造・挙動の電気化学的解析 充放電サイクル寿命に与える温度負荷あるいは添加剤の効果とリチウム析出形態との相関を,交流インピーダンス測定,in-situ CCD顕微鏡観察等を用いて検討した。充放電サイクル寿命の向上につながった,最適化された界面のモデル図ならびに析出/溶解機構を提案した。 3.有機電解液中における集電体材料の分極挙動に及ぼす電解質の影響 金属Liを使用した際の電解液および正極材料の最適化を考慮して,有機電解液中でのAl正極集電体の挙動について調査した。イミド系電解液中ではAlは激しく腐食されるが,少量のLiPF_6を添加することでAlの腐食が抑制されることを見出した。XPSによる表面分析の結果,LiPF_6の添加は表面フッ素化物の生成を促進することを明らかにした。
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