研究概要 |
南九州一帯に広く賦存し、700億tの埋蔵量が試算され、資源としての活用が期待されている火山堆積物・シラスは主成分比(SiO_2:76%,Al_2O_3:13%,SiO_2/Al_2O_3=9.8)が,耐熱性材料として知られているトバモライト(10CaO・Al_2O_3・10SiO_2・10H_2O)に近い事からシラスからのトバモライト合成を行った。このトバモライトは現在、珪石や石英等から合成されているが、資源枯渇が心配されだしている。 12年度は、シラスを活性化するためのアルカリ(KOH)が必要と思われたので、シラスとKOH(NaOHではよくなかった)にCa源としてCa(OH)_2、それと水の添加だけで低温前処理(60℃-5h)を経た後に、続いて150℃-3h以上水熱反応させる事で、容易にトバモライトの単一相が得られる事が判り、その有利な合成条件を明らかにして、特許申請を行った。 13年度は、つぎの2つの事を明らかにできた。即ち(1)アルカリを使ったトバモライト生成過程の解明:12年度でトバモライトが得られたが、その際なぜ低温前処理が必要かが解かっていなかった。即ち前処理温度は60℃が最もよく、さらに高くするとトバモライトが全く得られなかった。また前処理時間も5時間が最もよく6.5時間以上では全く得られなかった。この不思議な結果は成分分析で明らかにできた。即ち、アルカリ(KOH)環境下であるため低温前処理で、シラス表面のシロキサン結合の加水分解が起こり(Si-O-SiがSi-OK, HO-Si)、Kが取り込まれる(固相のKが増加)。一方でその表面へのCaの吸着が起こり(固相のCa増加)トバモライト核が生成する。しかし60℃-5h以上の条件(高温、長時間)ではKは更に増えるが、Caが急激に減少した。これはKの増加でシロキサン結合の加水分解を起こすだけでなく、吸着したCaの溶出をも起こし、トバモライト核の生成を阻害し、また生成した核の溶解をも起こす事を示す。従って核がないのでその後に高温処理(150℃-8h)をしてもトバモライトが全く得られなかったという事が解かった。 (2)アルカリを使わないトバモライトの合成法 12年度に得たトバモライトはKOHを私用したので生成物のは7-8%のK_2Oが含まれていた。従って13年度はシラスとCa(OH)_2と水だけでKOHを使わずトバモライトの合成を試み、成功した。これで得られたトバモライトにもK_2Oは1%以下含まれており、これは原料シラスに含まれていたものである。この詳細な合成条件については特許申請準備中であり詳細はまだ明らかにできないが、後日明らかにしたい。
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