研究概要 |
湿式法で作製したMフェライト-マグネタイト固溶体微粒子(M=Zn, Co)を.空気中300〜900℃で酸化する際の相分離・析出過程を,XRD測定,メスバウワー分光法,磁化測定,XPS測定,TEM観察等を用いて検討した。その結果,空気中300℃で酸化すると,Feリッチ相とZn(Co)リッチ相に相分離し,その後の酸化でFeリッチ相はγ-Fe_2O_3へと酸化され,Zn(Co)Fe_2O_4/γ-Fe_2O_3ナノコンポジットが生成した.一方,これを空気中600℃で酸化すると,酸化初期には空気中300℃での酸化と同様に,酸化・相分離によりZn(Co)Fe_2O_4/γ-Fe_2O_3ナノコンポジットが生成したが,長時間の酸化に伴いγ-Fe_2O_3はα-Fe_2O_3へと相変態した.M=Coの場合,空気中300℃,600℃での酸化に伴い保磁力は大きく増加した.特に,600℃で短時間酸化したCoFe_2O_4/α-Fe_2O_3ナノコンポジットは,飽和磁化は40emu/gと小さいものの,2200Oeという高い保磁力を示した.このCoFe_2O_4/α-Fe_2O_3ナノコンポジットを適当な条件で還元しCoFe_2O_4/γ-Fe_2O_3ナノコンポジットを得ることで,磁気記録媒体としての利用の可能性が広がると考えられる. 次いで,CoZnフェライト-マグネタイト固溶体の酸化に伴う相分離・析出挙動とこれにともなう磁性の変化を検討した.CoZnフェライト-マグネタイト固溶体を,空気中α-Fe_2O_3の析出しない温度域で酸化するとCo_yZn_<1-y>Fe_2O_4/γ-Fe_2O_3ナノコンポジットが生成した.一方,これを空気中高温で酸化した際,酸化初期にはCo, Znのリッチな領域と,Feのリッチな領域へ相分離し,Co_yZn_<1-y>Fe_2O_4/γ-Fe_2O_3ナノコンポジットが生成したが,更なる酸化でγ-Fe_2O_3がα-Fe_2O_3へと相変態した.α-Fe_2O_3が析出した500℃付近の酸化で保磁力が1,500Oeと大きい値をとり,新規な硬磁性体作成の可能性を示唆している.
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