研究概要 |
1,3-二置換アレン化合物は軸不斉を有し、その光学活性体には抗菌作用や酵素阻害作用などの生理作用を有するものが多く、農薬あるいは医薬品としての利用も期待されている。また、アレン化合物は合成中間体としても重要であり、特に軸不斉を活かした不斉反応への展開が期待されている。しかしながら光学活性アレン化合物の一般的な合成法は、等量かあるいはそれ以上の光学活性化合物を用いる方法に限られており、触媒量の光学活性化合物を用いる効率の良い合成法の開発が望まれている。本研究では、ラセミ体あるいはアキラルな基質を原料として、触媒量の光学活性化合物を用いて種々の官能基を有する光学活性アレン化合物を効率よく合成する一般的手法を開発することを目的に以下の項目について研究を進めた。 1.光学活性パラジウム触媒を用いるラセミ体プロパルギル化合物の速度論的光学分割過程を含むカルボニル化反応を開発した。入手容易なラセミ体のプロパルギルホスフェートを原料とし、光学活性ビスホスフィンを配位子とするパラジウム錯体触媒存在下、カルボニル化反応を行うと、一方の鏡像体のみが優先的に反応し、光学活性アレンカルボン酸エステルが効率よく得られた。また、本不斉カルボニル化反応において、一酸化炭素の圧力に依存して生成物の絶対配置が逆転する現象を明らかにし、反応機構に関する詳細な検討からその不斉識別機構を明らかにした。 2.光学活性パラジウム触媒を用いる2,3-アルカジエニル化合物の不斉求核置換反応を開発した。ラセミ体の2,3-アルカジエニルホスフェートを原料とし、光学活性ビスホスフィンを配位子とするパラジウム錯体触媒の存在下、マロネートアニオン、第1級および第2級アミン、アミド、イミドなどのソフトな求核剤を反応させると、光学活性アレン化合物が得られた。本反応の反応中間体の単離に成功し、不斉識別機構を明らかにした。
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