研究概要 |
初めてイミンと高選択的に反応するキラルホモエノラート等価体の開発に成功した。すなわち、acrolein 1,2-dicyclohexylethylene acetalと低原子価チタニウム反応剤[Ti(O-i-Pr)4/2i-PrMgCl]とから発生するアリルチタン化合物がイミン類とホモエノラート等価体として高選択的に反応することを見出した。種々のイミンを用いて反応を検討した結果,反応はイミン基質について高い一般性を持っていることがわかった(Teng, X.; Takayama, Y.; Okamoto, S.; Sato, F.J.Am.Chem.Soc.1999,121,11916-11917)。本研究では,この知見をもとに、5員環,6員環の環状イミンとの反応を行ったところこの場合も高い光学純度(78%ee以上)の付加物が得られること,α-アルコキシイミンでの重複不斉反応制御が可能であること,さらにこの反応を利用して抗HIVポリグアニジンアルカロイドbatzenadine Dが容易に合成できることを明らかにした(Okamoto, S.; Teng, X.; Takayama, Y.; Sato, F.J.Am.Chem.Soc.2001,123,3462-3471)。本反応は光学活性γ-アミノカルボニル化合物の新しい不斉合成の道を拓いたと考えている。この反応は用いる基質が入手容易であり,また低原子価チタン反応剤は安価かつ無毒性であることから大量合成にも耐えうる実用性が高い反応である。 また,本研究で得られた結果は,アクロレインアセタールとTi(0-i-Pr)4/2i-PrMgClとの反応によるアルコキシアリルチタンの発生とそのイミンへの立体選択的付加反応(Okamoto, S.; Fukuhara, K.; Sato, F.Tetrahedron Lett.2000,41,5561-5564),およびアルキニルアセタールとTi(0-i-Pr)4/2i-PrMgClとの反応による二置換フランの合成法(Teng, X.; Wada, T.; Okamoto, S.; Sato, F.Tetrahedron Lett.2001,42,5501-5503)の開発に有益な知見を与えた。
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