研究概要 |
面性不斉をもつキラル分子の不斉合成反応への活用を目的として、擬オルトジヒドロキシ[2.2]パラシクロファン、および一方のベンゼン環がパラ位、他方のベンゼン環がオルト位で結ばれたオルトパラ型のシクロファンである5-置換[3.3]オルトパラシクロファンおよび6-置換[4.4]オルトパラシクロファンの合成を行った。 まず、[2.2]パラシクロファンに触媒量の鉄粉存在下、四塩化炭素中2当量の臭素を作用させてジブロモ[2.2]パラシクロファンの混合物を得た。得られた混合物を分離することにより、10%の収率で擬オルトジブロモ[2.2]パラシクロファンが得られた。擬オルトジブロモ[2.2]パラシクロファンに4当量のt-ブチルリチウムを作用させてリチオ化した後、ホウ酸トリメチルおよび過酸化水素水で処理することにより、擬オルトジヒドロキシ[2.2]パラシクロファンが24%の収率で得られた。 また、2-プロモ-1,4-ビス(ブロモメチル)ベンゼンと1,2-ビス(メルカプトエチル)ベンゼンあるいは1,2-ビス(メルカプトプロピル)ベンゼンとの縮合反応により得られるジスルフィドを酸化してジスルフォン体を熱分解反応することにより、5-プロモ[3.3]オルトパラシクロファンおよび6-プロモ[4.4]オルトパラシクロファンを合成した。5-ブロモ[3.3]オルトパラシクロファンから誘導される5-ヒドロキシカルボニル[3.3]オルトパラシクロファンおよび6-ブロモ[4.4]オルトパラシクロファンについてX線結晶構造解析を行い、その立体構造を決定した。これらのシクロファンにも面性不斉が発生し、光学異性体が存在する。今後これらの光学分割を行い、高選択的な不斉合成反応に適用する予定である。
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