研究概要 |
本研究では、期間中に重合溶媒探索を含めた重合条件の最適化を図り、十数種類の新規非芳香族多脂環構造ポリイミドを合成した。また、前回の研究課題(「光・電子集積回路(OEIC)用ポリイミドの開発」、課題番号09651004)で積み残した"分子軌道計算による量子化学的シミュレーションから化学構造と誘電率相関解明"を遂行した。今回合成したポリイミドの耐熱性、光学的性質を調べ、これらがエレクトロニクス封止剤、液晶ディスプレイ用液晶配向膜、光導波路用素材などになりうることを示した。期間内に研究計画の一部である、「学外研究所・研究機関への試料提供」は行えなかったが、当初の研究目的の主要部分は概ね達成できたと考えている。今後、残された未執行部分あるいは研究の遂行過程で生じた新たな課題を継続して探求するつもりである。以下に年度毎の成果の概略を示す。 <平成12年度> 1)芳香環密度が減少すれば、換言すると芳香環を排除すれば、屈折率が小さくなることを、分子分極率αを定量的に議論することによって量子化学的に解明した。2)重合溶媒、モノマーの化学構造や添加順序を工夫することによってフィルム成型可能でしかも優れた耐熱性を持つ無色透明な非芳香族多脂環構造ポリイミドが合成できた。3)今年度購入した熱分析システムを用いて、合成したポリイミドの熱的性質(Tg、5%重量減少温度など)を調べた。 <平成13年度> 1)昨年度までに合成が完了した新規テトラカルボン酸二無水物(BSDA)の立体構造をNMRで決定した。2)ノルボルナジエンを出発原料にして新規多脂柔構造ジアミンの合成を種々試みたが、最終目的物の単離精製に成功していない。3)引き続き重合条件の最適化を図ると同時に種々のモノマーを用いたポリイミド合成を行った。4)上記ポリイミドの熱的性質および光物性(光透過率、屈折率、複屈折)を評価した。 <平成14年度> 1)報告者らが1985年に開発したビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2exo,3exo,5exo,6exo-テトラカルボン酸二無水物の合成法を見直して工業生産可能なレベルまで収率を向上させた。2)継続してノルボルナジエンを出発原料にした新規多脂環構造ジアミンの合成を種々試み、単離可能な手法を見出しつつある。3)非芳香族多脂環構造ポリイミド合成の溶媒として、発ガン性のあるHMPAに替わるテトラメチル尿素を見出した。4)市販のモノマーを使用して数種類の非芳香族多脂環構造ポリイミドを合成し、熱的性質・光物性を調べた。
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