研究概要 |
移動境界を有する流れの数値計算には,圧縮性流体に対しては一般座標系保存型表示式,非圧縮性流体に対してはALE法が通常用いられているが,これらには境界面が移動するごとに格子形成をし直さなければならない難点がある.この困難を解決するものに,研究代表者が提案した移動座標法がある.本研究の目的の一つは,それぞれの方法毎に個別に存在した移動境界を含む流れの数値計算法に統一的な導出を与えて学問としての展望を与えることであり,もう一つの目的は,現状の概観に留まらず,ALE法や移動座標法をより一般的なものに拡張して,物理的・工学的諸問題に適用し,上記困難により従来解けなかった問題も数値的に精度良く解けるようにすることである. 平成12年度においては,移動境界を含む流れの数値計算法について,その支配方程式(一般座標保存系表示式,ALE(Alternative Lagrangean Eulerian)表示式,移動座標法表示式)を系統的に示し併せて幾何保存則の解析的意味を明らかにした.更に移動座標法の拡張を行った.この移動座標法の適用方法及び対象として,1.多領域法:バリスティックレンジ内で飛翔体が発射される時の流れ,2.カットセル法との組み合せによる単領域法:変電所などでガスを噴出させながら高圧電流を遮断する装置(複雑形状)内の流れ,を選び数値計算を行った結果,本方法の有効性が確認された. 平成13年度においては,主にALE表示式を一般座標系へ拡張して,ガンタンネル流に適用した.数値計算では,より実現象に近い複雑な流れを模擬するという方向のほかに,モデル化(簡略化)を行って少ない計算時間で実用的な解を得ようとする方向がある.ここでは後者の例として,支配方程式として断面積の時間・空間変化を含む準一次元Euler方程式を導き出してALE法を正しく適用し,ピストン運動のモデル化や流体摩擦よる圧力損失のモデル化を行い組み込んだ.計算法やモデルの高精度化・高信頼化を行い実験との比較により本方法の有効性を確認した. 平成14年度においては,今まで得られた結果に評価・検討を加えてJournalに発表した。また今後本研究を発展させていくための準備段階として,形状の任意化に向けた非構造格子ソルバーの開発や高精度数値計算法ADERのソース項付き非線形保存則への拡張などを行った.
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