研究概要 |
動電学的手法による重金属汚染土壌の浄化に関して一連の研究を遂行し,本手法を適用することにより重金属を効率的に浄化できることを示した。研究の進捗に伴い,単に土壌に通電を行い界面動電現象を誘起して重金属を浄化するオーソドックスなプロセスおよび浄化機構の解明のみに留まらず,重金属の物質移動が起こらず,本手法の適用が困難な緩衝性地盤に適用するために,錯形成反応を利用した浄化促進効果の検討,さらには,地下水揚水法との併用を想定した動水勾配の利用による浄化促進効果の検討と,研究の幅を広げる結果となった。難透水性かつ緩衝性を示す地盤への動電学的手法の適用および比較的透水性の高い砂質粘土土壌における動水勾配併用による浄化効率の改善について行った研究成果を中心に報告する。まず、緩衝性地盤への適用であるが、この場合陰極側から錯形成剤であるエチレンジアミン四酢酸(EDTA)またはクエン酸を土壌に浸透させることにより、土壌に強く収着した重金属であるカドミウムを間隙水に溶解させ、物質移動性を高めることによって陽極側でカドミウムを回収することを検討した。その結果、EDTAの方がクエン酸に比べて、カドミウムの浄化に効果的であること、浄化効率に錯形成剤濃度が強く影響し、濃度を高めることで浄化効率を大きく向上できることが明らかとなった。また、錯形成剤を土壌に十分浸透しカドミウムとの錯形成反応を促進する上で、印加電圧が重要な因子であることも分かった。一方、動電土壌浄化法と地下水揚水法の併用による浄化効率の促進については、カドミウムで汚染した透水係数が10^<-4>cm/sオーダの砂質粘土土壌を対象に検討した結果、動水勾配を作用させることにより土壌の酸性化が促進され、その結果浄化効率が40〜80%程度良くなることが実験的に明らかになった。
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