研究概要 |
(1)リンゴ栽培品種の22種(1型ホモ3品種,ヘテロ型12品種,2型ホモ7品種)を供試し,各品種の収穫適期直前の15〜20日間に3〜4日毎に落果調査を行った.(2)ACS1型がヘテロの品種'つがる'及び2型ホモの品種'さんさ'の相互交雑からなるF1雑種個体を供試した.8月下旬に結実果数を調査し,6個以上結実した個体を対象に9月26日まで,3〜4日毎に落果数を経時的に調査し,落果率を算出した.(3)ヘテロ型品種の'つがる'の果実に8月31日にポリエチレン袋をかぶせ,将来の離層形成部位が袋の外になるようにして,果柄部で袋口をしっかりと閉じた.そして,果実を約1ppmのMCP(アグリード社より分譲)で16時間曝露後,袋を除去し,落果率と果実のエチレン生成量について調査した. [結果及び考察](1)1型ホモ品種の落果率は2品種で高く,ヘテロ型品種の落果率も全般に高かった.しかし、2型ホモではいずれの品種も落果率は低く,昨年と同様の結果が得られた.(2)図に示すとおり、収穫適熟期におけるヘテロ型12個体の落果率は2個体を除き,40〜100%と高かったが、2型ホモの15個体の落果率は0〜43.8%と全般的に低くかった.また,両ACS1型間には落果が本格的に開始する時期に明確な違いが認められた.(3)MCP処理は'つがる'の落果(63%)を強く(1%以下)抑制した.同時に果実内のエチレン生成とACS1の転写を完全に抑止した. 以上の結果,ACS1遺伝子型の違いにより,リンゴの収穫前落果性に関する品種・系統間の違いが説明できた.このことから,ACS1遺伝子型は収穫前落果の少ない品種を早期に選抜するためのDNAマーカーとして活用できることが示唆された.
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