研究概要 |
個体群光合成速度に及ぼす止葉と穂の影響を対照品種日本晴と多収性品種タカナリ,中国117号とで比較した.総乾物生産量はタカナリ>中国117号>日本晴の順に大きかった.個体群光合成速度は生育期間を通じてタカナリが最も高く,中国117号は日本晴に比べ登熟期には高く推移した.タカナリの個体群吸光係数は,他の2品種に比較してやや高かった.登熟中期の個体群光合成速度は,穂切除処理により日本晴で35%,タカナリで17%増加し,止葉切除処理により日本晴で37%,タカナリで48%減少した.中国117号の個体群光合成速度に及ぼすこれら処理の影響は小さかった.すなわち,日本晴では個体群上層に位置する穂が光を多く受け止め,下層の葉身を庇陰するのに対して,タカナリでは止葉の個体群光合成に対する貢献の大きいことが明らかになった.中国117号では個体群光合成速度に及ぼすこれらの影響は小さかった.以上の結果,タカナリは大きく,幅の広い,より直立した止葉と第II葉を穂の分布域より上層に配置することによって,より多くの光を捕捉しているのに対して,中国117号では直立した穂がより多くの光を下層へと透過することによって,個体群光合成速度を高めていると結論された.水稲における理想的草型として,葉群に対して相対的に穂の位置が低いことと,直立した穂を有することの重要性を指摘した.
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