研究概要 |
セスバニアおよびクロタラリフを供試して,生育初期における根粒菌の感染と根粒形成に及ぼす硝酸態窒素の影響について,特に根系構造との関係から発育形態学的な知見を得た.結果の大要は以下のとおりである. 1.β-glucronidase遺伝子を導入した根粒菌を用いることにより,異なる濃度の硝酸態窒素施用条件下におけるS.rostrataの根粒形成阻害の様相を視覚的にとらえ,また,スライドグラス法を用いて根系構造との関係をより詳細に観察した.その結果,播種後9日目には,0 mMN区および0.7 mMN区では根粒が確認されたが,5 mMN区では根粒の形成は認められず,硝酸態窒素による根粒形成の阻害を確認することができた.さらに,接種後5〜7日目に青色発色した側根出現部位を透過型電子顕微鏡下でより詳細に観察した結果,根粒菌の侵入経路として,細胞間隙に孝ける菌の増殖後の細胞内への侵入と,感染糸様構造を通した侵入の両パターンを示唆する切片像が得られた.しかし,硝酸態窒素施用条件による侵入経路の変化やその経時的変化の様相については今後の課題として残きれた. 2.クロタラリア2種について,硝酸態窒素施用が根系構造と根粒形成に及ぼす影響を,グロースポーチ法を用いて調査したところ,移植後20日目の根粒数,根粒乾物重,アセチレン還元活性は0 mMN区に比べて5,10 mMN区で低い値となり、施用窒素による阻害が確認された.またC. spectabillisにおいては,10 mMN区では,移植後20日目の地下部乾物重,総根面積と総根長の値が低く,根の発育と根粒形成との関係が示唆された. 以上のように,これまで研究事例の少なかったセスバニアやクロタラリアといった緑肥作物の施肥窒素反応に関して,発育形態学的な見地からいくつかの知見が得られた.しかし,二ヶ年の研究期間内では,当初の目的であった硝酸態窒素による根粒形成から窒素固定機能の発現に関する阻害機構のドグマを十分に整理することはできず,さらに研究を継続する予定である.
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