研究概要 |
微小移動運動補償装置は,ダニなどの微小動物の移動運動を観察・記録する装置である。電動スライダー付きX-Yテーブルに載せた微小動物の動きを,顕微鏡レンズ付きの高速ビデオトラッカーで捕捉し,演算した位置情報をパーソナルコンピューターに転送して原点に戻すようにX-Yテーブルを動かせば,対象は元の位置に引き戻される。その結果,ダニのmm/s以下の歩きは補償され,ダニは自由に歩きながらも一点に留まる結果となる。移動運動補償装置では無限平面を作るために,通常は球体を使用する。あえてX, Y-テーブルを使用する理由は,有限ではあるが充分に広いプレートを水平に置いて垂直移動のほとんど無い状態で位置制御をかけ,焦点深度の浅い顕微鏡レンズでも安定した追尾を可能にするためである。本研究はこの装置の実証試験である。 初年度は,X-Yテーブルの設計・製作,並びに電動スライダーの動作確認をおこなった。駆動の滑らかなマイクロステップ仕様のステッピングモータを導入したが,振動を完全には除去できなかった。本研究者はすでに移動運動補償装置を開発しているので,制御システムを大きく変えること無くこの研究に適用できるはずであった。しかし既存のコンピューター機種が実質的に生産中止となり,標準的なIBM-PC互換機上で,開発環境の再整備を余儀なくされた。最終年度の前半は移植作業に費やしたが,結局,制御プログラムの開発を完了し,装置の運転が可能となった。運転条件を最適化した結果,0.2-0.3mm/sのヤケヒョウヒダニ成体の動きを滑らかに追尾できた。ダニは定速で移動を続け,集合フェロモンgeranialを流すと,停止して方向転換する現象も観察できた。さらに仮想誘引源への誘導で効果を再検討の後,論文発表を予定している。
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