研究概要 |
本研究は、植生とその遷移について良く研究されている三宅島を研究フィールドとして、新鮮なスコリアを母材とする初期土壌生成過程に注目し、噴火堆積後の土壌生成年代を異にする各土壌を対象に、その土壌生成および養分蓄積過程の解明を目的とした。 1)1983年、1962年、1940年、1874年、および1000年以上前に噴火堆積したスコリア丘の土壌断面調査によれば、1874年までの地点では、A/C断面でA層の発達が次第に顕著となり、1000年以上経過した地点では、Cambic B層の発達が認められ、火山放出物未熟土から酸性褐色森林土へと発達した。 2)上記5断面の層位別試料について、粒径組成・pH.・水溶性および交換性塩基・全炭素・全窒素・粘土鉱物の同定・酸性シュウ酸アンモニウム可溶のAl, Fe, Si(非晶質ないし準晶粘土鉱物)・CECを定量した結果、噴火堆積後約1000年間の年代経過ともに、以下の土壌生成および養分蓄積過程が明らかとなった。 (1)2mm以上画分が減少し、シルトおよび粘土画分の合計が、0.8%から48%へと増加した。また、土壌有機物の蓄積過程も顕著であり、最表層で全炭素として0.04%から9.15%へと増加した。さらに、粘土鉱物としては大部分がまだ非晶質であるが、Al+1/2Fe量が大きく増大した。この結果、CECも最表層で、0.64から21.75cmol(+)kg-1へと増加した。そして、これらの増加頃向は、土壌生成年代の対数的関数として表現された。(2)上で述べた土壌構成成分の増大に対応して、水溶性および交換性塩基の各元素(Ca, Mg, K, Na)、とくに後者で顕著に蓄積し、それぞれ0.01から11.45、0.05から6.46、0.04から0.73、0.07から1.30cmolc(+)kg-1へと顕著に蓄積した。また、塩基飽和度は100%に近い状態で推移し、スコリア質土壌の特徴と考えられる。 (3)有効態リン酸と水・KCl抽出硝酸およびアンモニアイオンも増大し、CECの増大傾向と対応関係を示した。 以上のように、植生の一次遷移下で(裸地から極相林としてのタブノキ林まで)、約1000年間の初期土壌生成過程における土壌養分の蓄積速度が、わが国で初めて明らかとなった。
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