研究概要 |
Pseudomonas aeruginosa PAO1株の26の走化性トランスデューサー様(MCP)遺伝子の機能を解析するために、MCP遺伝子破壊株の作成を行った。PCRにより目的のDNA断片を増幅し、すべてのMCP遺伝子をクローニングした。そしてDNA相同組み換えによりPAO1株のゲノム上の対象となる遺伝子に位置特異的にカナマイシン耐性遺伝子カセットを導入し、26MCP遺伝子の破壊株をすべて作成した。MCP遺伝子の破壊株の走化性を調べた結果、pctABCはアミノ酸の感知、ctpHは高濃度リン酸・ctpLは低濃度リン酸の感知に関与していることが判明した。さらにMCP96-3はO_2に対する走化性のセンサーとして機能していることが示された。PAO1株は、2,4-Dを誘引物質、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン及びクロロフォルムなどの揮発性有機塩素化合物を忌避物質として認識することがわかった。しかし、すべてのMCP遺伝子破壊株はこれら物質に正常に応答した。この結果からひとつの物質を複数のMCPが感知していると考えられた。pilJ遺伝子の破壊株では、ラムノリピッドおよびエラスターゼの生産が向上した。このことからPilJはクゥオーラムセンシングに関与していることが示唆された。さらに、pilJ破壊株は0.5M NaClの高塩濃度条件での生育が向上した。これらのことから、P.aeruginosaのMCPは走化性以外の機能にも関与していることが示された。
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