研究概要 |
本研究では,ラット血清レクチンであるmannose-binding lectin (MBL)とハチ毒ペプチドメリチンとのハイブリッドタンパク質を作製し、プラスミドpET-32aを用いて大腸菌で発現させた。得られたタンパク質はチオレドキシンとの融合タンパク質Trx-Mel-MBLとして発現されたため,チオレドキシン部分をエンテロキナーゼで切断し,Mel-MBLとした状態で赤血球及び細菌類と混合したところ,レクチン活性依存的に赤血球凝集活性,溶血活性及び抗菌活性を発現した。一方、海産無脊椎動物グミ(Cucumaria echinata)から得られた溶血性レクチンCEL-IIIの部分配列を基に20残基のペプチドを合成し,その物性と生理活性を検討した結果,CEL-IIIの332番目から始まるペプチド(P332)がグラム陽性菌に対する強い抗菌活性を示すことが明らかになった。この活性は,P332が細菌細胞膜に障害を与え,イオン透過性を上昇させることによることが示唆された。さらに,グミのC型レクチンCEL-I及びCEL-IとN-アセチルガラクトサミンとの複合体の結晶化を行い、それぞれについてX線結晶構造解析を行ったところ、CEL-IはCa^<2+>を介してGalNAcを認識しており,さらに115番目のアルギニン残基が特異性を決定するのに重要であることが明らかになった。これらのデータから,異なる糖結合特異性及び細胞結合性を有するレクチンを分子設計し、コンジュゲート作製に利用することが今後可能になるものと考えられる。
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