研究概要 |
本研究の対象とする1,2-α-マンノシダーゼはタンパク質のアスパラギン残基に結合しているN-アセチルグルコサミン2残基を介して結合しているハイマンノースタイプの糖鎖のうち、1,2-α-マンノシド結合のみを特異的に加水分解する酵素である。本研究では、すでに本酵素の詳細な酵素化学的研究を終え、さらに本酵素をコ-ドする遺伝子msdSをクローニングし、酵母、ならびにコウジキンにより遺伝子産物の大量発現に成功している。 本研究に用いているクロコウジキンAspergillus saitoiのにはカルシウムの関与は全く知られていなかった。しかし、今回本酵素分子1モル当り1グラム原子のCa^<2+>の存在が知られた。このCa^<2+>は非常に固く結合していて、キレイト試薬であるエチレンジアミン4酢酸(EDTA)の処理によってもなかなかはずれなかったのだが、弱アルカリ性で処理することにより活性を失ったCa^<2+>フリーのアポ酵素が得られた。さらに、遺伝子madSの部位特異的変異によりクロコウジキンAspergillus saitoiの1,2-α-マンノシダーゼに活性に必須のCa^<2+>のリガンドの位置決定を行った。部位特異的変異酵素D269N, E273Q, E414Q, E474QはそれぞれCa^<2+>のリガンドと結論される結果を得た。他に部位特異的変異により活性の大幅に減ずるEI24Q, E411Qのそれぞれの部位特異的変異酵素は触媒中心あるいは基質との結合部位にかかわる重要なサイトであると考えられた。なお、前報において、触媒活性の増加をもたらす残基と考えられたE207Qについて、詳細な検討を加えた結果、E207Q残基は触媒活性に関わるサイトとしても、Ca^<2+>のリガンドとしても存在していないことが明らかになった。
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