研究概要 |
複雑な代謝経路の相互関係を理解することにより,アミノ酸発酵や有機酸発酵などが工業的に行われるようになってきている.本研究はその複雑な代謝経路の相互関係を理解することにより,過多炭素源培地においても酢酸を生産しないような大腸菌の育種を目指している. 大腸菌における酢酸生成の主経路はAcetate kinase-Phoshotransferase (ack-pta)系である.作製したこの系の破壊株から,第2の遺伝子Acetyl-coA synthetase (acs)の関与を明らかにし,その破壊株を作製した.二重破壊株は酢酸をほとんど資化できないものであったが,炭素源過多培地で酢酸を生成した.酢酸資化能を回復した偽復帰変異株を得て,酢酸代謝に関与する第3の遺伝子の検索を行った.すなわち,偽復帰変異株にトランスポゾンを挿入し,再び酢酸代謝が不能となった変異株を得て,トランスポゾン挿入場所の同定を行った.第3の遺伝子はacetohydroxy acid synthase I(ilvB)遺伝子であった.トランスポゾンの挿入場所はこの第3の遺伝子以外にはなかった.この結果から,大腸菌において生育できる速度の酢酸代謝系はこの3種の遺伝子であると結論した.しかし、3種の遺伝子の破壊株は炭素源過多培地で遅い速度ながら酢酸を生成することがわかり,目的の育種株を年度内に得ることはできなかった.
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