研究概要 |
抗酸化過程において,抗酸化性物質は,生体成分の酸化中間体であるペルオキシラジカルをトラップすることによりその活性を示す.その際,抗酸化性物質は必ずラジカル種となり,反応することにより新たな生成物を与える.本研究では,この生成物に着目して,その化学構造および生成過程の解析から,抗酸化性物質の抗酸化機構にアプローチした.対象とした抗酸化物質として,抗酸化性が強いフードフェノールとして有名であり,実用ともされているターメリック由来のクルクミンとシソ科ハーブのセージ由来のカルノシックアシドを取り上げた.研究の結果,クルクミンは,脂質ペルオキシラジカルと反応し,安定な3環性ペルオキシドを生成するルートと,クルクミン自体がダイマーとなるルートにより抗酸化性を示すことを見出し,抗酸化機構の完全解明に成功した.一方,カルノシックアシドについては,11位のラジカルのオルト位またはパラ位でペルオキシラジカルがトラップされ,その後,分解することによりオルトキノン体とヒロドキシパラキノン体を与える機構を解明した.さらに,この研究の過程で,抗酸化反応性生物であり,本来まったく抗酸化性を示さないオルトキノン体から,条件によっては強力な抗酸化性が回復することを発見した.この回復は,自己レドックス反応によるカルノシックアシドの生成であることを突き止めた.この回復機構は,シソ科ハーブ自体の強力な抗酸化機能を説明できる新たな現象であることから大いに評価された.
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