研究概要 |
スギ雄性不稔の発現と植物ホルモンの関係を明らかにするため、正常個体のスギ雄花に植物ホルモン(GA3,エスレル,IAA, (+)-ABA, iPAde、t-Z)及び生合成阻害剤(ウニコナゾール-P、トリネキサパックエチル,ブラシナゾール,フルリドン、6-Azauracil、Triazine STD,6-メルカトプリン水飽和)の処理を時期別に行った。また、時期別に雄性不稔個体及び正常個体の内生ホルモン(エチレン、サイトカイニン)量を測定した。植物ホルモン及び生合成阻害剤の処理を行った正常個体の雄花においては、正常な花粉が形成され、植物ホルモン及び生合成阻害剤の効果によって雄性不稔は発現しなかった。 雄花に含まれる内生ホルモンのエチレンは、小胞子の分化が四分子期で終止する雄性不稔個体540において、四分子期に正常個体及び他の雄性不稔個体(818)よりも、著しく発生量が高くなった。このことから、雄性不稔個体540においては、エチレンの合成が雄性不稔の発現に何らかの影響を及ぼしていることが推察された。 雄花に主に含まれるサイトカイニン(i6Ado, i6Ade, t-Z, t-ZR)は、雄性不稔個体(257,258,592)において、活性型のt-ZRの生産時期が正常個体と比較して早い時期に、多量に作られることが確認された。不稔個体では2〜4分子期に合成が盛んになるのに対し、正常個体では小胞子期から徐々に作り出される。その量も、正常個体が雄花約1.0g当たり、約0.66μgに対し、不稔個体では約5.00μgと約7.6倍もの高い数値を示した。また、No.257とNo.258においてはiPAdeの値が2〜4分子期以降、正常個体では約0.60μg/gであるのに対し、約3.00μg/gと5倍近い数値を維持していた。 これらの結果から、雄性不稔個体ではエチレンやサイトカイニンなどの植物ホルモンがその発現に関与していることが示唆された。
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