研究概要 |
研究の主な成果を以下に示す。 (1)東京の初夏から冬にかけて3回のスギ柱材の天然乾燥試験の結果、乾燥開始時の含水率が高い(100%以上)と割れ発生開始が遅くなり最終の割れ発生率も小さい。初期含水率が比較的低い(50-60%)の試験材は、乾燥開始後1,2日に割れ発生が認められ、その後も増加し最終の割れ発生率も高い。 (2)スギ柱材の生材からの乾燥実験(室内モデル実験)では表面割れ発生時の材の水分状態に関して、水分傾斜および材表面における蒸発水分量の測定を行ない、表面割れ発生は、湿度が低いほうが発生が早かった。一方、表面割れ発生時の材表層における水分傾斜は、表層1mm以内の範囲で評価すると、繊維飽和点以下でかつ含水率差が10%前後になっている状態で割れ発生が確認された。さらに、割れ発生時の材料表面の蒸発水分量の結果では、外部温度湿度の違いに係わらず、10g/m^2h以下になった時点で割れが発生するという傾向があった。表面蒸発量は天然乾燥に関する割れ制御指標としての可能性を秘めている。 (3)ヘムロックの柱材(115mm角)の生材について、日本の80都市の月別平年気温、平年相対湿度を参考として、温度10,20,30℃、相対湿度60,70,80,90%を組み合わせた温度湿度条件で乾燥を行ない、表面割れが発生する環境条件および割れ発生時の材中の含水率分布(水分傾斜)について検討した。(1)割れ発生は湿度の影響を強く受ける傾向が確認され、相対湿度90%の条件は割れ発生が少なく、大略低湿度条件ほど割れが多くなる。常温では、相対湿度80〜90%に表面割れ発生限界点がある。(2)表面割れ観察から、乾燥条件以外にも初期含水率、材中の欠点(目廻り、木口割れ)などが割れ発生に影響を与えた。(3)表層付近付(深さ5mm)の水分傾斜結果から、表面割れ発生材は、割れ発生がなかった材よりも大きな水分傾斜(=0.18/0.077=2.3倍)が見られた。表面割れ発生が抑制できる天然乾燥可能期間について海外雑誌に投稿し掲載が決定した。 (4)残された課題:広範囲の気象条件(0℃以下の気象条件、風速)の表面割れに対する影響の解明。材の強度面からの割れの検討。
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