研究概要 |
トレハロースは主要転流炭水化物として,また低分子の貯蔵糖としてきのこの子実体形成に重要な役割を持っている.また,本糖は低温や乾燥ストレスに対する保護物質として作用することが報告されている.しかし,これらの詳細については今なお不明である.そこで,これらの点の解明を目的として検討し,以下の知見を得た. 先ず,シイタケを対象にトレハロースの分解酵素活性を調べ,トレハラーゼおよびトレハロースホスホリラーゼ活性が子実体の形成およびその生育時に上昇することを明らかにした.この内,菌体外および菌体内トレハラーゼを電気泳動的に均一な酵素標品にまで精製し,その詳細な諸性質を調べた.いずれの酵素も酸性トレハラーゼで二量体の形態を取り,菌体外トレハラーゼの分子量は158kDa,菌体内トレハラ-ゼのそれは130kDaを示した.さらにトレハロースのみに特異的に作用し,グルコース2分子を遊離する酵素であった.また,ヒラタケを用いた検討から,トレハロースの合成に機能するホスホグルコムターゼの活性をトレハロースが非拮抗的に且害し,グリコーゲンからトレハロースへの分解を代謝調節していることを明らかにした.一方,シイタケを初めとする数種の食用きのこ菌をトレハロース添加培地で培養すると菌体内にトレハロースが取り込まれ冷蔵や冷凍ストレスに対する抵抗性を高めるようになることを認めた.そこで,菌株保存への本糖の応用についても検討し,実用化が河能なことを示した.
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