研究概要 |
赤血球膜糖タンパク質であるヒトグリコホリンの機能として、血液型決定基の他にもウィルスの接着能や細胞認識機能などが明らかとなっている。さらに病原菌の侵入防止や免疫等生体防御機構に重要な役割を果たしている可能性が大きい。そこで魚類グリコホリンの生体防御機能の探索とその機構を解明することを目的とした。平成11年までにコイおよびニジマス血液からのグリコホリン抽出法が確立できたため、本研究ではコイのグリコホリンを用いた生体防御機能の解明として種々の魚病性細菌を含む各種の細菌およびウィルスとの相互作用の観察およびその活性部位と思われるグリコホリン糖鎖の構造解明に重点をおいて研究を進めた。用いた細菌はAeromonas hydrophila, Edwardsiella tarda, Vibrio anguillarum, Bacillus subtilisやMicrococcuss luteusなどであり、魚病性ウィルスはIPNを用いた。その結果、凝集反応は観察されなかったものの、電子顕微鏡で観察した結果、グリコホリンと思われるタンパク質分子が菌体と作用している様子が観察された。さらに、細菌性白雲病のPseudomonas fluorescensに感染したコイの赤血球膜と健常なコイの赤血球膜を比較した結果、赤血球膜の構造タンパク質に変化はなかったが、グリコホリン含量は顕著な減少が観察された。この結果より、血液中の病原菌にグリコホリンが作用して血球膜より遊離した可能性が強く示唆された。この現象はグリコホリンの糖鎖が作用した可能性が高く、糖鎖の構造解明の研究を併せて行った。大量に調製したグリコホリンより糖鎖を遊離させ、糖鎖用陰イオン交換カラムを用いたHPLCを用いて糖鎖を分画した。その結果、シアル酸が1つ結合したオリゴ糖と2つ結合したオリゴ糖に分別できた。これらの糖鎖をHPLCを用いて大量分取した。分取・脱塩の過程でシアル酸が脱落したが、この標品を用いてNMRスペクトルを測定した。その結果、今までの研究結果を裏付けるデータが得られたものの、メチル化およびGC/MSによる確認が必要となった。現在東レリサーチセンター(株)の解析待ちの状態である。
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