研究概要 |
標記研究課題について,研究成果の概要は以下の通りである. 近年,河川生態系を保全する立場からの河川整備計画が行われつつある.このような中で,河川横断工作物の農業用取水堰(頭首工)などに設置されている魚道の設置意味が非常に重要視され,河川環境の一部,すなわち「川の流れの一部」として意義付けて整備する考え方が重要視されるようになってきた.したがって,河川特有の地理的・水理的特性や生態系の、条件に適応した魚道形式を選定することがますます重要になっている. 本研究体制は,河川と魚道内の水生動物の生態環境を明らかにする生態学的分野と魚道構造に起因する水理特性と水質特性を明らかにする水環境分野で構成され,それぞれの専門分野から学際的に展開された. 本研究では,主として現地魚道における24時間の採捕調査と水理調査が精力的に行われ,(1)魚道機能を検証するために魚道構造に起因する水理特性と魚類等の遡上形態との関係を詳細に明らかにし,魚道調査評価法の一つの方向性を提示したこと,(2)水理設計のための魚類等が魚道を遡上していく流れの境界条件として重要なfactorである設計流速に関して,本調査研究では魚道隔壁部(切り欠き・潜孔)での魚類の遡上動態と流れ場との関係を小型水中TVカメラで克明に調べ,設計流速や遡上経路への新たな考え方を提案したのに加え,水質環境特性や河川における魚類の生態特性など様々な新しい知見を得ることができた. これらの研究成果の一部を農業土木学会誌・農業土木学会論文集・水工学論文集・河川技術論文集・応用生態工学・第9回世界湖沼会議論文集などに公表した.
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