研究概要 |
融雪諸過程を掌握し,それが流出に与える影響を明らかにすることは,灌漑計画や,その他の利水計画の上で,大変に重要な事項であると思われる.この目的のため,試験流域を設けて,融雪流出にかかわる諸要素を観測し,大要,以下の結果を得た. 積雪と土壌との熱交換の結果として生じる融雪は底面融雪とよばれている.底面融雪が融雪流出に与える影響を考察することは重要と思われるが,根雪期間にわたって,底面融雪を推定する試みはきわめて少ない.この目的に資するため,北海道から東海地方にかけての11地点を対象として選定し,根雪期間における底面融雪量の推定を行い,地点間の比較を行った. 底面融雪に対して,融雪期では積雪の表面付近で生ずる表層融雪が支配的となる.積雪の表層で生じた融雪水は,時間遅れを伴って,地表面に到達する.それゆえ,融雪洪水を予測するためには,融雪水の積雪中を浸透するメカニズムを掌握する必要がある.この目的のため,表層融雪の推定に必要な気象要素および融雪水の地表面到達量を観測した.観測結果に基づき,主に氷河域を対象に提案された浸透モデルに改良を加えて,表層融雪を入力し,推定された地表面到達量の評価を行った.その結果,融雪のピーク以降では良好な再現性が得られるものの,浸潤前線の形成に伴う融雪量の損失が生じるなどの問題点が明らかになった. この研究の一環として,いくつかの流域において積雪水量を推定し,地球温暖化が春季の河川流量に与える影響評価を試みた.
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