研究概要 |
本研究は,イオン交換膜電気透析法を用いて農産物加工工場および植物工場の排水からのイオン性物質の回収の可能性を求めるとともに,回収される物質の物質収支や物質濃縮の効率について検討したものである。 はじめに電気透析法を用いて馬鈴薯加工工場排水からの有機酸および電解質の濃縮/分離を試み,併せて電気透析前後の水質について考察を行うとともに,還元型アスコルビン酸の電気透析濃縮/分離を行った。次に,計測したBOD, COD, TS, VS,およびイオン性物質に物質収支を検討した結果,物質収支がある程度成立し,電気透析法を環境浄化に用いる際のインデックスの予測に有用であることが示された。また,電気透析による溶質濃度変化を膜理論により解析したところデータと一致する結果が得られた。 続いて植物工場培養液排水に含まれる電解質の分離特性を検討した。即ち,植物工場培養液排水に含まれるNO_3,PO_4,SO_4,NH_4,K, Ca, Mgイオン等の電気透析分離/濃縮特性について排水のpHを変化させながら検討した。また,植物工場培養液排水に含まれる硝酸性窒素の希釈が十分に可能であることが示された。更に,ここでは膜種の異なるイオン交換膜を用いてイオン分離特性を評価し,分離に適した膜について検討した。 本研究はイオン交換膜を用いて,排水中のイオン性物質の回収や,回収される物質について,物質収支,電流効率,エネルギー,膜種の観点から検討したものであり,今後,農産物・食品加工工場から生じる排水の資源再利用や水環境浄化に関し,有益な情報を与えると考える。
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