研究概要 |
本研究で提唱する「誘導自発摂餌」とは、何らかの誘導操作により実現される「自発摂餌」を意味する。誘導操作は、対象とする養魚の集団が「自発摂餌」という状態に至るプロセス(自発摂餌学習過程)をなるべくすばやく確実に促進する工夫のことである。「誘導自発摂餌システム」とは,そのような誘導操作を備えた「自発摂餌システム」といえる。本研究では、マダイ、ヒラメ、コイ、金魚、タナゴなどの魚種を対象として、自発摂餌学習過程に大きな影響を持つ摂餌要求センサを中心として様々な要因について研究した。摂餌要求センサへのアクセス機会を増大させ、養魚の食欲本能や摂餌行動を誘起させる因子について研究すると共に,安定な自発摂餌を誘導するための技術について研究を行った。具体的な成果の概要は次のとおりである。 ・プッシュ型摂餌要求センサの先端部の色の影響、太さの影響を金魚で検討し、水中で認識しやすい色のセンサが活発なセンサ突き行動を誘発する傾向があることを明らかにすると共に、供試魚の口のサイズと同等以上の太さのセンサが魚の突き行動を誘起する効果が高いことが推定された。 ・日本での自発摂餌の実績の少ないヒラメ、ウナギを対象としてプル型センサを使用した自発摂餌の可能性について検討した。ヒラメは自発摂餌が開始し安定するまでに、長い月日(1〜6ヶ月)を要し、場合によっては始まらないこともあった。ヒラメでは、センサ先端浮の種類や形状によっても反応が変わり、設置深さによって摂餌リズムまで変わってしまう例が見られた。ウナギについては、自発摂餌を始めて1週間ほどで安定し、給餌停止にもすばやく反応することがわかった。しかし、飼育環境や報酬量により全く摂餌行動をとらなくなることもあった。 ・マダイの稚魚から成体までの広い成育レベルで光ファイバーセンサが利用できることを実証すると共に、赤色光と近赤外光の発光色の影響を調べた。また、光ファイバーセンサの耐久性・信頼性を高めるため、ガラス管により防水処理を施した摂餌要求センサを試作し、飼育実験によりその有効性を実証した。 ・摂餌要求センサ入力が行われてから給餌されるまでの応答時間の影響をタナゴを用いて調べた結果,応答時間300秒まででの自発摂餌行動の確認ができた。 ・従来のプル型センサのような疑似餌的センサではなく,口に咥えることのできない接触型センサである回転型摂餌要求センサを新たに試作した。このセンサをブリ、ウナギ、ヒラメを対象として,自発摂餌飼育の可能性を探った。 ・自発摂餌学習過程に関する基礎実験を行い、センサの接続変更や応答時間の影響などにより、魚の摂餌行動を誘発および抑止する要因について研究を行った。 ・指定のタイミングで呼び餌繰出しと発光可能な能動的操作を行える誘導自発摂餌システムの開発を行った。
|