研究概要 |
ウシ凍結乾燥精子の卵細胞質内精子注入法(ICSI)による受精と胚発生を調べ,以下の結果を得た。(1)ウシ凍結融解精液の1〜7日間の低温保存による生存率は保存日数とともに著しく減少した。(2)融解温度0℃・液体窒素ガス平衡時間5分のドライアイス錠剤化法によるウシ凍結融解精子の再凍結において,高い生存率(47%)が得られた。また,再凍結した生存精子のICSIにおける第二極体放出率78%,卵割率73%,胚盤胞期率20%で,凍結融解生存精子のICSIと同様であった。(3)CZBまたはNa-EGTA緩衝液に浮遊させ凍結乾燥したウシ精子のICSIによる前核形成率に差はなかったが,精子アスター形成率はNa-EGTA緩衝液区で有意に高かった(39%vs.16%)。また,Na-EGTA緩衝液で凍結乾燥した精子のICSIによる卵割率はCZBで凍結乾燥した精子のICSIと比べ有意に高く(65%VS.28%),CZB凍結乾燥精子のICSIでは8細胞期にまったく発生しなかったが,Na-EGTA緩衝液で凍結乾燥した精子のICSIでは胚盤胞への発生が観察された(6%)。(4)凍結乾燥精子の再水和後での2.5〜5mM DTT処理や0.01%Triton X-100処理は前核形成率,精子アスター形成率,胚発生率を改善しなかった。(5)5μM ionomicin5分と3時間後1.9mM DMAP3時間の活性化処理はICSI後4時間の7%エタノール5分活性化処理と比べ,有意に高い卵割率(72%VS.59%)と胚盤胞率であった(11%VS.1%)。 以上から,ウシ凍結乾燥精子のICSIによって胚盤胞胚の作出が可能であることが明らかとなった。
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