研究概要 |
比較ウイルス学的解析から神経病原性に関する遺伝子の情報を得るため,約150kbの長さのEHV-9およびEHV-1ウイルスゲノムを8から12kbの部分的重複断片としてLA-PCR法により増幅し,種々の制限酵素を用い,制限酵素切断点多型性解析(RFLP)を行った.より詳細で幅広い解析を行うため,EHV-9に加え,日本分離EHV-124株,アメリカにおいてウシから分離されたEHV-18株,さらにシマウマ,オナガー(アジアノロバ)およびトムソンガゼルから分離されたEHV-1各3株を用た.我が国におけるEHV-1分離株の比較解析では,神経病原性株と非神経病原性株間で相違が見られた.変異遺伝子はImmediate Early(IE)遺伝子であった.この変異はEHV-1とウマヘルペスウイルス4型(EHV-4)との遺伝子組換えにより生じたことが示唆された.ウイルス粒子エンベロープ糖蛋白質の一種であるgI遺伝子にも変異が見られた.他のEHV-1株の解析でも,ハムスターに対し神経病原性が見られなかった株でIE遺伝子に変異が見られた.一方,ハムスターに神経病原性を示した株においてICPO遺伝子およびORF1から3の欠損が見いだされ,これらの遺伝子は神経病原性には関与しないことが示唆された.クローン化小プラーク形成EHV-9についても同様の解析を詳細に行っているが,これまでに変異は見いだされておらず,点突然変異のようなごくわずかな変異である可能性がある.エンベロープ糖蛋白質gIおよびgEのβーガラクトシダーゼ遺伝子挿入変異体を作成し,ウイルス学的性状を解析した.gI挿入変異体のハムスターにおける神経病原性は野生株に比較して減弱していた.gE挿入変異体のハムスターにおける病原性はほぼ消失していた.この結果からgEは神経病原性の決定因子のひとつであることが明らかとなった.
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