研究課題/領域番号 |
12660291
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
応用獣医学
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
上野 俊治 北里大学, 獣医畜産学部, 助教授 (70184950)
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研究分担者 |
鈴木 隆 京都府立大学, 人間環境学部, 教授 (00132887)
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研究期間 (年度) |
2000 – 2001
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研究課題ステータス |
完了 (2001年度)
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配分額 *注記 |
3,300千円 (直接経費: 3,300千円)
2001年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
2000年度: 2,800千円 (直接経費: 2,800千円)
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キーワード | organotin compounds / metabolism / hepatotoxicity / immunotoxicity / rodent / primates / mitochondria |
研究概要 |
本研究は、環境汚染物質の一つであり、食品汚染物質でもあるブチルスズ化合物の肝臓毒性発現機序を、代謝およびミトコンドリアへの影響の観点から齧歯類を用いて詳細に検討した。また、本物質のヒトへの毒性を推定する目的で、カニクイザルを用いて本化合物の霊長類における代謝と毒性を評価した。 1.ブチルスズ化合物の肝臓毒性が実験動物で異なる原因 トリブチルスズは肝臓内で代謝されジブチルスズとなり毒性を発現するが、ジブチルスズは齧歯類の肝臓では殆ど代謝されない。ジブチルスズは、強い肝臓毒性を示すマウス肝細胞ではミトコンドリアに多く分布するが、毒性が発現されないモルモット肝細胞ではミトコンドリア以外に分布することが明らかとなった。 2.肝臓ミトコシドリア機能へのブチルスズ化合物の影響 マウスおよびモルモット肝細胞から分離したミトコンドリアにin vitroでトリおよびジブチルスズ化合物を添加すると、両化合物ともミトコンドリア呼吸活性を抑制するが、その影響に動物種差は見られなかった。一方、in vivoでトリおよびジブチルスズを投与すると、両化合物ともにマウス肝臓ミトコンドリアにのみ呼吸活性抑制が観察され、ミトコンドリアに分布するブチルスズの主体はジブチルスズであった。このようなin vivoにおける影響の違いは、ジブチルスズのBinderであるDithiol形態となり得るSH基量がマウス肝細胞ミトコンドリアに多く分布し、ジブチルスズを結合しやすいことが一因であることが明らかとなった。 3.ブチルスズ化合物の霊長類に対する毒性 トリブチルスズ化合物は霊長類において免疫毒性、腎臓毒性および肝臓毒性を、ジブチルスズ化合物も免疫毒性を誘起する可能性が示唆された。また、霊長類の肝臓では、細胞内に取り込まれたトリブチルスズ化合物のほとんどが単純な脱アルキル反応でジブチルスズとなりそれ以上代謝を受けずに排泄されることが明らかとなった。従って、トリブチルスズおよびジブチルスズ化合物は、ヒトの健康障害を引き起こす可能性が高いことが霊長類を使用した実験で初めて証明された。 以上のように、トリブチルスズおよびジブチルスズ化合物は、生態系に影響を与える環境汚染物質としてばかりでなく、ヒトの健康に被害を及ぼす食品汚染物質としても注目すべきである。
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