腹膜に知覚神経が分布していることは昔から知られているがその知覚神経の細胞体の分布については神経トレーサー等を用いた研究はなされていない。昨年度の研究でラットの腹壁の内張を様々な部位の腹膜にfluoro gold(FG)を塗り、10日後に各脊髄神経節と迷走神経下神経節(nodose ganglion)の切片を蛍光顕微鏡で検索して陽性細胞の分布を調べた。壁側腹膜である腹壁の腹膜は近傍の脊髄神経節に支配されていた。臓側腹膜である腸管を包む腹膜や腸間膜にFGを塗ると、迷走神経下神経節に陽性細胞が出現したが、近傍の脊髄神経節にも陽性細胞が観察された。 本年度は腹膜の知覚神経の終末を観察する実験を行った。腹壁を内張する腹膜にFGを塗布し、脊髄神経節の切片に抗SPあるいは抗CGRP抗体を用いて免疫組織化学を行うと小型の神経節細胞の一部がSPあるいはCGRPを持っていることがわかった。FIGで標識され、同時にSPあるいはCGRPを持っている細胞も観察され、腹膜に知覚神経を送る神経細胞の一部がSPあるいはCGRPを持つことがわかった。そこで、各部から採取した腹膜に対して抗SPあるいは抗CGRP抗体を用いて免疫組織化学を行った。腹膜に分布するSPあるいはCGRI)陽性神経線維は屈曲しながら走っていたが密度は低い。先端がややふくれた自由終末も観察された。
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