研究概要 |
わが国の高温による死亡・障害(熱中症)の発生と気象条件について検討すると共に,日常生活において曝露される環境温度の実態と生体反応について検討した。 (1)北海道での運動時熱中症の発生は本州に比して2から3℃低値で熱中症が発生しており,高温に対する適応の程度に差があると考えられた。 (2)神戸市の救急活動記録による熱中症,脱水症の発生の実態は,65歳以上の高齢者に多く,高温環境での発生も多いが,前日との温度差が2℃付近で発生数が高値であった。 (3)日常生活での温度を観察すると気象台観測値は夜に低く日中に高い周期的な日変化を示すが,生活場面での曝露温度は,日中に冷房のある室内での滞在時には夜間の最低値よりもさらに低温に曝露され,自然温度の日周期と乖離し,日常生活行動では人工環境だけでなく自然環境にも曝露されるので曝露範囲が拡大されていることが示された。また,冷房の室内(低温)から自然環境(高温)への移動による急激な温度変化がみられた。 (4)自転車こぎ運動を夏季室内(20〜25℃)と夏季屋外(30から35℃)で連続して実施した時のそれぞれの環境での心拍数と酸素摂取量の相関関係から温渡変化による運動時の生体反応を検討した。室内と屋外では両者の回帰直線の傾きがことなり,同一運動負荷に対する酸素摂取量に変化は見られないが心拍数が高温時には増加することが示され,高温暴露による皮膚血管の拡張反応と考察した。夏期の日常生活において室内は空調により低温に保たれているが屋外は高温環境であり,急激な温度変化が問題と考えられた。
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