研究概要 |
G蛋白質共役型受容体の刺激時に活性化されるCa2+透過型陽イオンチャネル(receptor-operated cation channels ; ROCCs)は、広く生体内に分布し、様々な生病理機能の発現・調節に関与している可能性が高いが、その分予的実体は全く不明であった。本研究では、ROCCsがショウジョウバエ視覚異常に関連したTRP蛋白質(transient receptor potential protein)の脊椎動物ホモログと分子レベルで密接に対応している可能性に着目し、その分子的対応関係を明らかにすることを目的にし、以下の実験を行った;(1)組換え発現したTRPホモログのイオンチャネルとしての特性を、細胞内Ca2+測定法やパッチクランプ法によってnativeROCCsのそれと詳細に比較検討した。(2)(1)でnative組織との対応が明らかになったTRPホモログのmRNA分布が、量的・質的に問題とするROCCのそれと一致するか、RT-PCR、in situハイブリダイゼーション法を用いて検討した。(3)(1)の組織由来の細胞を培養し、各TRPホモログに特異的なアンチセンスオリゴDNAで処理することによってROCCの発現及びその関連する機能が抑制されるか確認した。その結果、(i)血圧の調節に中心的な役割を果たしているalpha-1アドレナリン受容体活性化時に生じるCa2+流入の分子実体として、TRPホモログの一つTRP6が必須の構成蛋白質であることを明らかにし、新しい降圧薬開発の有望な分子標的であることを示した(Circ. Res.88,325-332,2001;日本臨床66(1),18-24,2002)。(ii)TRP6とTRP関連蛋白質のLTRPC2がヘテロ会合体を形成し、中枢神経、副腎クロム親和性細胞や消化管平滑筋のムスカリン受容体活性化陽イオンチャネルと極めて似た性質を示すチャネル活性を発現している実験証拠を得た(第75回日本薬理学会西南部会発表)。
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