研究概要 |
近年、血清レクチンの一つマンノース結合レクチン(MBL)が異物表面の糖鎖を認識して補体系を活性化するレクチン経路の存在が明らかにされた.本研究では、MBLと複合体を形成し、レクチン経路を惹起するセリンプロテアーゼ、MASP-1およびMASP-2遺伝子の発現調節機構の解明を目的として、両遺伝子のプロモータを解析した。また、補体古典的経路を惹起するC1s遺伝子のプロモータの特徴と比較した. 1ヒトMASP-1,MASP-2,C1s遺伝子の上流領域を単離し、転写開始点と上流領域の塩基配列を決定した. 2各遺伝子の上流領域2〜3KbpをpGL3ベクターに連結し、HepG2細胞またはHeLa細胞に導入しプロモータ活性を測定した。その結果、正常向きのコンストラクトは逆向きと比較し50〜100倍高い活性を示した。また、HepG2細胞を宿主とした場合、HeLa細胞と比較し150〜400倍高い活性が得られ、組織特異的発現が示された。さらに、種々の欠失変異体を作成し、発現調節に働くエレメント配列を同定した. 3ベクターを導入したHepG2細胞にサイトカインを添加し、プロモータ活性に及ぼす効果を測定した.その結果、IL-1βはMASP-1およびMASP-2の活性を30〜80%増加させた.IL-1βの効果はIL-6の共存によって消失した.一方、C1sプロモータの活性は、IL-6,IL-1βの添加によって約2倍に増加し、両者の共存によって4倍に増加した.IFN-γは、MASP-1を阻害しC1sの活性を約3倍増加させた。これらの結果から、C1sは典型的な急性期タンパクであることが示された。一方MASPにはその特徴は見られず、それぞれが関与する補体活性化経路の生理的意味のちがいを示唆していると考えられた.特に、IL-6とIFN-γはMASP-1とC1sに及ぼすその対照的な効果から、2つの補体活性化経路の相互転換に関与している可能性が示唆された。
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