研究概要 |
1.赤血球型5-アミノレブリン酸合成酵素(ALAS-E)とATP特異的スクシニルCoA合成酵素(A-SCS)が機能的な酵素複合体を形成しうるかどうかをin vitroで検討するために、ALAS-EとSCSの各コンポーネント(SCS-α,SCS-βA, SCS-βG)をGST融合蛋白質としてバキュロウイルスを用いて昆虫細胞で発現させた後、精製してそれぞれの酵素活性を測定した。その結果は大腸菌で発現・精製した組み換え蛋白質と同様で、ALAS-Eに関しては十分な活性を有する蛋白質が得られたが、SCSについてはSCS-αとSCS-βA(=A-SCS),SCS-αとSCS-βG(=G-SCS)いずれの組み合わせにおいても、十分な酵素活性を得ることは出来なかった。SCSについて酵素活性を有する組み換え蛋白質が得られなかった理由としては、1)昆虫細胞内における蛋白質のリン酸化や糖鎖の付加などの修飾が十分では無い、2)他の要素(例えば補酵素などの補欠分子)が必要であるなどが考えられるが、その様な補欠分子の欠乏は鉄芽球性貧血の原因になりうるものと考えられる。 2.ALAS-EとSCS-βAとの結合に必須の部分を同定するために、ALAS-E蛋白質の一部を欠失させた変異体を作成し、その変位蛋白質がALAS-EとSCS-βAの結合にどのような影響を与えるかをYeast two-hybrid systemを用いて検討した。その結果、成熟型ALAS-EのN末端147残基を欠失させた場合,またはC末端の50残基を欠失させた場合にはALAS-EとSCS-βAの結合が観察されなくなることが明らかとなった。これらの欠失変異体ではALAS-Eのhomodimerの形成も認められなくなることから、ALAS-Eのhomodimerの形成がALAS-EとA-SCSとの酵素結合体の形成に必須である可能性が示唆された。
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