研究概要 |
ODCのアンチセンスオリゴヌクレオチドによる癌化・浸潤・転移抑制を目指した遺伝子治療確立のため、異なる3種類のヒト癌細胞(MKN45胃癌、COLO201大腸癌、RD横紋筋肉腫細胞)を用いてin vitroでの増殖抑制実験を行った。増殖抑制実験は、トリパンブルー法あるいはMTT法で2,4,6日間、時間経過を追って行った。ODCアンチセンスオリゴヌクレオチドは、予備実験で、10μMの濃度が最適であったため、本実験では、この濃度を用いた。コントロールとしては、スクランブルオリゴヌクレオチドを用いた。アンチセンスオリゴヌクレオチドの担体として、テロペプチドを取り除いたI型コラーゲンを用いた。濃度は、予備実験の結果から0.018%で実験を行った。また、担体のコントロールとしてリポソームを用いて比較実験を行った。コラーゲンで包埋したODCアンチセンスオリゴヌクレオチドは、MKN45,COLO201,RD細胞の増殖を時間依存性に有意に抑制した。コラーゲン単独でも、ODCアンチセンスオリゴヌクレオチド単独でも、さらにコラーゲンの代わりのリポソームでも増殖抑制効果が見られたが、抑制の程度は小さかった。これらのin vitroの結果を得て、さらにin vivoの実験を開始した。胃癌、大腸癌、横紋筋肉腫細胞をヌードマウス皮下に移植し、腫瘍が、約200mgとなった時点で、ODCのアンチセンスオリゴヌクレオチドをアテロコラーゲンに包埋し、皮下、筋肉、腹腔の3つのルートで投与した。コントロールに比して腫瘍重量で0.2.13%に癌が縮小し、1回投与で5.6週間腫瘍抑制効果が持続した。本研究の結果、ODCのアンチセンスオリゴヌクレオチドと担体としてのコラーゲンを用いた新規の癌遺伝子治療法は有用である。
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