研究概要 |
平成12年度に行った検討は以下の通りである。 1.病理学的検討:当研究所に蓄積された1390例の肺切除例のデータベースから選び出された粘膜内に限局した腺系腫瘍は、異型腺腫様過形成529病変、細気管支肺胞癌89病変であった。これらの組織像を再検討した結果、異型腺腫様過形成、異型腺腫様過形成-細気管支肺胞癌移行型、細気管支肺胞癌がそれぞれ、525病変(85%)、36(5.9%)、57(9.1%)認められた。この結果から、異型腺腫様過形成は肺腺癌の前癌病変であると考えられる。 2.LOHの解析:本研究の標的である異型腺腫様過形成-細気管支肺胞癌の検討を行う前に、早期非浸潤腺癌におけるPCR-based LOHの解析を行い、どの様なマイクロサテライトマーカーが有用かをまず明らかにすることを試みた。検討に当たって、材料は当部に保管されているメタノール固定パラフィン包埋標本を用いた。LOHの有無を検索する遺伝子座の存在する染色体は3p(FHIT),5q(APC),9p(p16),13q(Rb),17p(p53),18q(Smad4),22q(Band M)であり、それぞれの遺伝子座特異的なアイクロサテライトマーカーを複数用いて行った。また、病変細胞のDNAを検討するためにlaser capture microdissection法を用いた。至適条件の条件設定をまず行い、早期非浸潤腺癌の解析を行った。その結果、40症例を対象に検索したところ5q,9p,13qにLOHが認められた。 3.今後の研究の展開:早期非浸潤腺癌で得られた結果を用い、3カ所の遺伝子座を対象に異型腺腫様過形成-細気管支肺胞癌移行型の各部位ごとにおけるLOHの有無を検索する。なお、9q(TSC-1),16p(TSC-2)が早期肺腺癌においてLOHの頻度が高いことが最近知られてきており、これらのマイクロサテライトマーカーの検討も今後行う予定である。
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