研究概要 |
1.ラット心筋梗塞モデルにおける細胞-細胞間,細胞-細胞外基質間コミュニケーションのリモデリングについて,以下を明らかにした。 (1)梗塞部及び梗塞に面する心筋細胞において,ギャップ結合は,アドヘレンス結合,デスモソームに比べて早期より著しく減少する,(2)梗塞境界部付近では,ギャップ結合が心筋細胞のlateral面へ局在し,この異常な分布はアドヘレンス結合,デスモソームを伴っている,(3)梗塞境界部断端の心筋細胞において,同一細胞に由来する細胞突起間に,ギャップ結合,アドヘレンス結合,デスモソームが存在し,細胞内結合装置(reflexive junctional complex)を形成する,(4)梗塞境界部の残存心筋細胞先端では,β1-インテグリンの発現が次第に増加し,乳頭筋の筋腱索結合部に類似した構造に変化する。 2.リアルタイム共焦点顕微鏡を用いた,心筋梗塞境界部におけるカルシウム動態異常の解析により、以下を明らかにした。 (1)梗塞部の心筋細胞は且uo3の蛍光を示さないこと,(2)その周囲の心筋細胞は,変化しない高いfluo3の蛍光を示すこと,(3)境界部の心筋細胞はCa2+波を発生すること,(4)非障害部寄りの境界部の心筋細胞に発生するCa2+波の中には,Ca2+トランジェントによってうち消されるものが存在すること,(5)非障害部の心筋細胞は,Ca2+波を示さず,Ca2+トランジェントのみを発生することである。 以上の結果より、心筋梗塞境界部において、細胞間コミュニケーションの異常が、カルシウム動態等の細胞内シグナル伝達異常の発生に密接に関与することを明らかにした。
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