研究概要 |
平成12年度に引き続きIn vitroアッセイ系で幼虫の行動阻害が認められたHyaluronidase, ConA, Trypsin, Protease、Lipase, NaIO4を用いてIn vivoでの実験を行った。まず35S-methionineで幼虫をラベルし、上記薬物処理を行った虫体をラットに感染、10,15,20,25時間後にラットを殺処分、凍結、CMC包埋を行って、全身切片とした。その結果、幼虫の移動速度はコントロール群に比して有意差を認めなかった。In vitroの結果は全くin vivoでは効果無く、他の何らかの感知因子で行動していると思えた。次に従来の全身autoradiographyの実験からラット皮下に感染した幼虫はラットの脳に向かう前にラットの鼻部を目指して行動している事が推察された。よってラベル幼虫をラットの頭部皮下に投与してその動向を検討した。コントロールは下腹部皮下に投与した。投与後10,15,20時間後に全身オートラヂオグラフィ法を用いて検索した。その結果ラット頭部に感染させた群は鼻部に到達する時間が早かった。これは単に頭部から鼻部への距離が短いと言う理由からだけではなく感染させた幼虫すべてが鼻部に向かって進んでいた。一方コントロール群はラットの体前部に進むもの、内臓部に向かうもの、体後部に向かうものが有り方向性に乱れが見られた。しかし感染20時間後ではその差が消失した。この結果からネズミ糞線虫は本来ラットの鼻部を感知する.能力(アンテナ)が存在することが示唆された。よって非固有宿主のモルモットに同様に頭部と下腹部皮下に感染させ、感染15、20時間後の幼虫の動向を検索した。その結果幼虫は感染20時間目に一部鼻部先端に移行するももの鼻腔内、頭蓋内には侵入しなかった。この事は非固有宿主物質にIn vitroでは誘引されてもIn vivoでは誘引されない(幼虫が行動を起こさない)厳しい宿主特異性の存在が判明した。
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