研究概要 |
1.B. henselae増殖用液体培地の検討:ブルセラブロス培地にヘミンおよび鉄イオンを添加すると良好な増殖がみられ,増殖用培地における鉄イオンの重要性が示唆された。 2.B. henselaeの培養上清から内皮細胞増殖因子の分離を試みた。増殖因子は分子量約3万前後の蛋白であると推定され,パーフュージョンクロマト法により比較的高い溶出塩濃度領域に活性画分を得たが,分画操作過程での失活が多く,十分なレベルの分離精製には至らなかった。 3.B. henselaeは内皮細胞および末梢血単球からIL-8およびMCP-1の産生を誘導した。この効果は不活化菌でも認められ,菌体成分の煮沸処理や硫酸ポリミキシンB処理にても失活しなかった。 4.B. henselae由来の内皮細胞増殖促進因子は菌体から分泌される易熱性蛋白であり,IL-8およびMCP-1の発現誘導は耐熱性の菌体成分によると考えられた。これらの,異なる菌体由来物質が相まって本菌による病巣形成が進行するものと考えられた。 5.B. henselaeはヒト末梢血好中球のアポトーシスを抑制した。この活性は菌の培養上清中にも認められ,パーフュージョンクロマトによる分画の結果,強い活性を示す単独の画分が得られた。 6.B. henselaeによる内皮細胞でのサイトカインおよび接着分子発現誘導の研究過程で,Porphyromonas gingivalisもIL-8, MCP-1,およびICAM-1の発現増強を誘導することを見出した。この発現増強は不活化菌でも認められ,菌体成分の煮沸処理や硫酸ポリミキシB処理によっても失活しなかった。 7.B. henselaeによる内皮細胞増殖促進,炎症性サイトカインの発現誘導,および好中球のアポトーシス抑制作用のいずれについても線毛は全く関与していなかった。
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