研究概要 |
富山県神通川流域カドミウム(Cd)汚染地域24集落に居住し,大正3(1914)年から昭和4(1929)年の間に出生した女性住民を対象とした。1985年に尿細管機能と骨代謝に関する詳細な検索を実施した50例について,2000年12月〜2001年12月の間に同様の検査を実施し,尿細管機能異常に伴う骨代謝異常の病態ならびに発症の危険因子を検討した。現在までに解析の完了した22例(73〜80歳)について,尿細管機能と骨代謝機能に関する1985年と2001年の成績を比較した結果,以下の知見を得た。 体重,身長は有意に低下した。尿中総タンパク,β_2-ミクログロブリン(β_2-M),グルコース排泄は有意に増加しており,また,糸球体濾過値は62ml/minから53ml/minへと有意に減少し,尿細管障害の進行・悪化が認められた。尿中に排泄されるCaの割合は低下していたが,糸球体濾過量の低下による尿排泄量の減少と考えられた。さらに,血清カルシウム,無機リン値の有意な上昇がみられたが,同様に糸球体濾過量の低下によるものと考えられた。中手骨Digital Image Processing(DIP)法による骨量評価では,BMC値が2.01mmAlから1.69mmAlへと低下し,骨量の有意な減少がみられた。4例において,骨レントゲン検査所見において骨改変層様の変化を認め,骨軟化症が疑われた。 カドミウム腎症22例の16年にわたる長期観察の結果,イタイイタイ病と考えられる4例を見い出した。4例中3例は糸球体濾過値の低下が顕著であり,また尿細管リン最大再吸収値(TmP/GFR)も著しく低下しており,腎機能の低下,血清無機リン濃度の減少が骨軟化症発症の主要な病態と考えられた。`
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