研究概要 |
わが国は急速な人口の高齢化を迎え、65歳以上の老年人口はすでに2000万人に達し、このうち日常生活を寝たきりで送ることを余儀なくされているいわゆる寝たきり老人はまもなく120万人に達する見込みである。寝たきりは起立生活からの脱適応をもたらし、病気の回復のみならず社会生活への復帰も遅らせてしまう。そこで、本研究では14日間の連続臥床において、1)直立位平衡維持調節機能がどうなるのか、2)視覚刺激につねに手で応答する単純反応性とあらかじめ指定された視覚刺激にのみ手で応答する選択反応性がどうなるのか、3)暗算パフォーマンスについて協調性運動制御機能の生理的脱適応を明らかにする。4)1,2,3,5,7,9,11,12,13,14日の10日間60ワット運動負荷+1.4G遠心30分間をした場合としない場合で、14日間の長期間連続臥床の不使用の悪影響を除くかどうかを知るために臥床対照群と運動+遠心群の比較をした。その結果、臥床群においては、長期連続臥床終了1日後、動揺度の指標である一分あたりの重心動揺軌跡長が臥床前の対照と比べて有意に長くなっていた。反応時間は、臥床開始8日目までは、臥床前対照との比較で、有意に短くなっていなかった。この8日目後以降被験者は、長期臥床アンケート調査により、痛みを訴えない。暗算パフォーマンスは、臥床前より臥床後13日目2日後に上昇していた。運動+1.4G遠心群においては、長期臥床実験後1日目に動揺度が臥床前より有意に増加し、2日目では動揺度について、臥床前と差があるかどうか分からなかった。すなわち、長期臥床による要因は有意に認められるものの、運動+1.4G遠心による効果はあるかどうか分からなかった。
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