研究概要 |
ヘリコバクター・ピロリ(以下、H.pylori)には、サイトトキシン関連蛋白(以下、CagA)を有するものと、そうでないものの2種類存在する。本研究は、循環器疾患の治療を専門分野のひとつとしている秋田県内の一医療機関を対象としてH.pylori感染に関して、虚血性心疾患の患者群とコントロール群とを比較する目的で、Case-control studyを行なった。虚血性心疾患(急性冠症候群、安定狭心症、冠連攣症候群など)の診断を得た者を患者群とした。患者群は242例(男性190例、女性52例、年齢23歳から77歳)であり、全例に冠動脈造影を実施し診断している。検査目的で来院した外来患者で、冠動脈造影に異常が認められない者をコントロール群とした。コントロール群は94例(男性49例、女性45例、年齢27歳から75歳)で、この群も全例冠動脈造影を実施している。H.pyloriのIgG抗体価(Pirika Plate G Helicobacter II assay kit, BIOMERICA, Newport, CA)および抗CagA抗体価(Immunobiological Research Institute, Siena, Italy)は、それぞれELISA法により測定した。統計解析には、Statistical Analysis System(SAS Institute, Cary, NC, USA)を用いた。オッズ比(OR)および95%信頼区間(95%CI)を求め、P<0.05を有意差ありと判断した。 患者群242例の中に、急性冠症候群(急性心筋梗塞および不安定狭心症)が164例認められ、そのうちH.pylori抗体の測定ができたのは142例(陽性率70.4%)であり、コントロール群のそれは86例(陽性率72.1%)であった。両群間に有意差は認められなかった(OR=0.92、95%CI;0.51-1.67、P=0.073)。H.pylori抗体陽性者のなかでCagA抗体が陽性であった者は、急性冠症候群が64例、CagA陽性率64.0%、コントロール群は41例、66.1%であった。両群間にCagA抗体の有無に関して有意差は認められなかった(OR:0.91、95%CI;0.47-1.77、p=0.783)。
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